「コール」/菊尾
これと、それを
選んでいる間の時間
まるで嵐の前の空みたい
決して状態は美しくなくて
崩れる前髪が視界に線を入れるように
色を変えたって断ち切らない限り
私の視界に雨は降る
笑うことも
怒ることもなく
降り続けて
やがて覆いつくしてしまう
あの空のように持ち去ってほしいけど
後から後から飽きることもなく
引っ切り無しに痕跡ばかり残して
私は
フロントガラスの上で踊るワイパーみたい
綺麗にしたいだけなのに
声の出し方を忘れてしまう
耳が塞がってしまう
何よりもこのままでは
指が凍えてしまう
何千回でも
何万回でも
あなたを呼ぶ
あなたの声を聞く
だから今だけは
私を必要としてください
叶わないから願うこと
終わっていく今を
最後まで笑って
嘘だけ残っても汚さないように上手に
さようなら
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