蹈鞴川/るか
蹈鞴川
それが、何処の、監獄の壁から吹きつけてくる風なのか、
匂いなのか、鉞の一閃なのか、夢は深海の泥土に塗り潰されていて、
傷のように甘い、一瞬の移ろいをへて、妹が何度でも私の、
背中を切りつける。私は、熟しきった柑橘を両の頬に受け、既に
硝子状に磨かれた風景に、嗚咽のように噎びながら、流し込まれる
溶銑の傍らにいる。宙吊りに晒された目は乾涸びた午睡の膜に、優しく
包まれて、楽土から射し入る熱線を浴び、火照りながら、顛動する。
だれがおまえの踝を焼いたか
漁礁をめぐる交響楽が突堤から覗き込む女の虹である
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