ぽちたま/恋月 ぴの
わんと鳴いたから
「ぼち」
わたしのこと
ほんとは誰も知らないはずなのに
「おはよう」
だなんて声かけて
頭をなでなでしたりする
とげぬき地蔵じゃないんだってば
雪が降ってきたからって
庭なんか駆け回ったりしないし
そのうちあたまツルツルになっちゃうよ
にゃあと鳴いたから
「たま」
冬の日差しがまぶしいだけなのに
しかめっ面が哲学的だなんて
遠くからわたしのこと眺めてる
右前足をひょいとあげているのは
そんな気分になっただけ
そうそう樅の木がちくちくしてるのは
魔よけのためらしい
天井まで届きそうなツリーの下で
まったりと寝そべ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(21)