ぽちたま/恋月 ぴの
 
わんと鳴いたから
「ぼち」

わたしのこと
ほんとは誰も知らないはずなのに
「おはよう」
だなんて声かけて
頭をなでなでしたりする

とげぬき地蔵じゃないんだってば

雪が降ってきたからって
庭なんか駆け回ったりしないし
そのうちあたまツルツルになっちゃうよ

にゃあと鳴いたから
「たま」

冬の日差しがまぶしいだけなのに
しかめっ面が哲学的だなんて
遠くからわたしのこと眺めてる

右前足をひょいとあげているのは
そんな気分になっただけ

そうそう樅の木がちくちくしてるのは
魔よけのためらしい
天井まで届きそうなツリーの下で
まったりと寝そべ
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