機関車とくじら/たもつ
瞬きをすると虹が溢れてしまう目があるので
笑うと発音しないPを吐いてしまう口があるので
まだ誰にも褒められたことのない君が
冷蔵庫に自分の耳を並べている
僕は機関車と同じ匂いのお花畑で
同じくらいにくたびれた自分の名前を
ひとつひとつ埋めるのに忙しい
二人の真ん中ぐらいにある画用紙の中
クレヨンで描かれたくじらがゆっくりと呼吸を失う
夕焼けの色を母親と間違えた子犬が
斜めになったまま吠え続けている
昨日の食卓は想像の域を脱しない
いじりすぎた性器はどこまでも空っぽのまま
壊れたスリッパを二人でもう一度組み立てていく
僕らは恥ずかしそうに
それを新しい思い出と呼ぶだろう
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