機関車とくじら/AB(なかほど)
 

海の動物になりたかった
海に行きたかった

底の方で
脊髄が列車のように並んで
色のない海老が
乗客のようにじっとしている

マリンスノーの中
錆びてしまいたかった

潮を吹くつもりで
眼を閉じたら
とても懐かしい汽笛を鳴らしてしまった

帰る場所は海でも陸でもない
から たぶん
ちょうど砂浜が見えるころで
泣きそうになってしまうんだろう

さよならとくじらが言った
(ように見えた)
さよならと機関車も答えた
(ように聞こえた)

僕はどちらにも行けるような気がした


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