終幕予想/森さかな
 
 
 
 
一粒の真珠を噛み砕いてから
ようやく僕はそれが
砂糖であったことに気づく
 
 
 
頑なな窓ガラスは
粒子を跳ね返し
伝うことすら許さない
 
 
 
夜行電車を待つきみは今
どこをさまよっているだろう
存在を掻き消すように泣く空の下を
 
 
 
こうして私は、
世界と接続しなくなったのだと
青いインクが遺した日記は
 
 
 
だれかが(もしくはきみか僕が)昨日
ベランダに置き忘れてしまった
きっともうすべてが溶けだしているね
 
 
 
甘い口の中に
まだ微かに結晶があるのがわかる
顕微鏡で透かすと美しいだろ
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