さいごの坂道。/hope
 
しの家はありました。



でも今は【今】。

夜明けまで、まだ少し。
終わらない坂道は、動けなくなってしまった君のせい。
君は言う、
「ごめんね」
と。
夜の終わりの、一歩手前で。



目を閉じたまま、あなたの手を握る。
「ううん、違うの」
それでも、やっぱり、今は【今】。
だから、もうママはいないの。わかってるの。ちゃんと、ね。
どこまでも続く坂道は、ママとあたしだけの思い出。
届く風は、あたしを不安にさせるけど、それって、きっと、思い出の中の一番深い場所から。
この坂道の、そこらかしこに、たくさん、たくさん…
もう、戻らないの。戻れないの。だから
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