雨の街、雪の橋/佐野権太
 
いつもなら
真横から朝日を浴びる時間に
ライトを点灯させた車が
飛抹をあげて通り過ぎていく
ふいに
まだ夢が続いているような
不安にかられる

クレーンを折り曲げた重機が
ごうごうと追いかけてくるから
大きな黒い空を映した
水たまりの前で
立ち止まる
傘を斜めにして
自転車とすれ違う
軽く咳き込んで
歩きだす

正月休みには
今年こそ
雪山に連れて行ってやろう
子供たちは、ソリを抱えて
視界いっぱいの白に
輝くだろう

何もかも
憂欝なものに
紛れてしまいそうになる
のを
かろうじて引き止める

年末まで綱渡りの
スケジュールを思い出して
溜め息をひとつ
それでも僕は
知り人に会えば
おはよう、と言うのだろう
温かい雨に打たれれば
崩れてしまう雪のように
脆い笑みを浮かべて





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