傘をさす日/佐々木妖精
雨がまず髪を染め
くたびれた道を舗装する
雨が黒いのか
眼差しが閉じているのか
景色が見えない
落ちてきたのは塗料だろうか
コーラだろうか
アスファルトが溶け
鼻につく
口を開けると水滴
すっぱい
そう感じたのは
地図の向こうに工場があって
レモンがそうだから
人と地球に優しい店で
せっかく
値札も取ったのに
雲は日差しをその身に纏い
足元はところどころ剥げている
三本目の日傘を
玄関に並べる
まだ雨を知らない
透明な傘たち
ちきう
は
ひたすら無かんしんで
頭痛がまた
雨を呼ぶので
アスピリンを口に含み
窓から身を乗り出す
飲み下す優しさは苦く
空腹が荒れる
バファリンの半分は
パンがいい
換気扇が息をのむ
このように地球は廻り
灰皿に押し潰され眠る
瞼の模様にうなされ
カーテンで日を落とす
生きのびた一日の終わりに
十分歯を磨き
ようやく傘をかまえ
浴室の中でコックをひねり
馴れ初めの さす音
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