水辺で見た夢のこと/猫のひたい撫でるたま子
 
静かで音ひとつしない水辺に座る

木のベンチは既に湿っていて私の体温を脅かす

平らな水の広がりは午後二時の強い日差しを受けて黄金に輝く鳥たちのための道

雨が降ってきて、それを見届けようと硬いチーズパンをかじる

私のかみの毛は徐々に雨の雫におおわれて柔らかを増す

広大な水たまりに目をやると、
雨の波紋は見えず飛び上がった水しぶきが音楽を奏ではじめる

テレビが終わったあとの残存のように一定の雑さでメロディーは進み、
線香花火が終わる前の華やかを迎える

これを記憶に残そうか迷う間もなく、

ふと触る私の頬には髪の毛一本分の細さの切り傷ができていた

指先についた赤い血と雨を混ぜ合わせたら音楽は消える

いつもの公園に人は私だけでなく

一人一人と現れはじめた

みな、確認をし合わずに心の内で思っている

私にもあなたにもいまの終わりの音楽が聴こえていたと
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