とおい時代/九谷夏紀
 
う は
 5年で君らを巻き込んで散った
 それでも
 狼と呼ばれた男たちよ
 あれだけ無茶苦茶に暴れまわって
 悔いなどないだろ
 後悔する人間はあんなふうに捨て身になれない 
 

 君が最期のとき聞いた足音を聞いた気がしたよ
 開け放たれていた深夜の雨戸
 逃げた狭い廊下
 つまずいた机
 柱に残った刀傷
 低い鴨居
 君らが少しだけ身近になる
 残虐さは跡形もなく消えた明るい部屋で
 君らの気配を探すと
 暗い中にギラギラ光る瞳が浮かび上がる
 見つめてみたい
 君らの瞳が
 狂気だったのか狭かったのか
 くすんでいたのか深すぎたのか
 平穏な昼下がり
 かけ離れた時世と志
 同じ町で

 


 
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