痙攣するひとみ/森さかな
 
 
 
 
広告のなかで
おばけみたいな女が
笑う
 
きっと今日も
教卓のうえで
聖典が晒されていて
 
朝飲んだ牛乳の
白さだけが
清廉でしたねと
 
地下鉄をくぐる
煩雑なぼくは
スカートのひだが歪むことを厭い
 
繰り返される
嫌悪は行き先がないから
老いた彼らに向けられ
 
自分から籠に入りながらも
それを不服とする
不可思議な精神で登校鞄を潰すのだ
 
まるでまっさらな存在であると
過信している
傲慢さを持って
 
 
 
がたごと足元が揺れているのは
嘔吐させるためで
 
 
決して進むためではないことを
この町で生きるために忘れてはならない
 
 
 
 
ほら、教えはなにも役に立たないだろ
紺色の規律すらぼくを守れやしないのだ
 
 
 
偽ることに長けたつもりで
けれど
扉の嵌めガラスに映った顔は
 
美しいと誰も思わない
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