わたしの好きなもの/k o u j i * i k e n a g a
邪魔な段ボールがあって、もちろんよそ様のものなのだけれど、邪魔である事は腹立たしく、息を吸ってから蹴飛ばした。ハズレの段ボールだったらしく、中には何か重金属の固まりが詰まっていて、爪が割れた。骨も折れているかもしれない。痛みというよりも、つま先がづんづんと膨らんでいくような感覚が先行している。仕事帰りの私は自分が何歳なのか一瞬忘れて、少年のころを思い出す。悪がき仲間が、缶蹴りの缶を、鉛詰めのとんでもないものとこっそり交換していたことがあった。しかしそれを蹴ったのは自分だったろうか、他の友だちだっただろうか。はっきりとは蘇らない記憶のもどかしさはうまく例えられない。それはとても難しいと思うのだが。
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