ただ一人、恵みの雨を待ちわびる/松本 卓也
今だって現状はたいして変わってない
数え上げればキリが無いほどの、嫌な事
片手で数えられれば十分な程度の、良い事
笑顔に意味を求めなくなり
ただ自分を社会に馴染ませながら
日々を振り返る事もなくなっていた
寂しさを癒す温もりを宿す何かが
確かに何度かは抱きしめてくれた気もする
その内幾つかは身勝手な臆病さで見失い
その内幾つかは社会に巻き込まれ消えた
何時ごろからだろう
孤独である事を恐れるあまり
本音を笑顔で覆い隠していないと
生きていけなくなった自分に気付いたのは
たとえ誰の耳に届いたとしても
負け惜しみか卑屈でしかない呟きなど
いっその事喋れな
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