ずどん/大覚アキラ
ずどん
と降ってくる
忘れていた
昨日 投函する約束だった
あの手紙のこと
鼓膜を破るほどの 響き
もし 頭蓋骨の中が空洞ならば
きっと 永久に反響し続ける
そんな感じの 響きとともに
ずどん
と降ってくる
手紙は 実のところまだ
一行だって書けてはいないので
怠慢な郵便屋が
どこかに捨ててしまったのかもね
などと 適当な嘘をついて
うっかり忘れていたものが
完全に 忘れ去られてしまうまで
息を殺して 死んだふりでもしようか
ずどん
と降ってきても
ぴくり
とも動かないで
どこにいるのか
あるいは
いるのかどうかさえ定かではないが
濡れ衣を着せられた怠慢な郵便屋に
心の中で 詫びながら
ぜんぶ 忘れ去られてしまうまで
きれいに 真っ白になるまで
息を殺して
じっと
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