『Purgatory』/東雲 李葉
 
夢のなかでは昨日のつづきが喉を伝い落ちていく。
今日の雫をのみこんであたしは明日へ染まっていく。


朝。しあわせの鐘を鳴らした目ざめ。
まぶしい黄金の光たちがあらたな日づけを告げている。
昼。日かげと日なたの境をあるく。
そのうち白がやきついて灰にきらわれてしまいそう。
夕方。茜色にそそいだミルクが煙のようにひろがって、
片隅にしかすぎないけれど夢のように世界がかわった。
夜。みえるのは純粋な色。にごりもよどみもしない黒。
閉じても開けてもかわらない。夜より深い両目の闇。

今日みた景色、時間のながれやめぐる表情。
あたしのこころのきれいなところで眠るように透きとおり、
とうめいになるまでろ過されて記憶の底をさらさら流れる。
そこではたくさんの色をなくした粒たちが、
結晶とも呼べるすがたで寄り添いあってかたちとなる。
決して、はなれないで。わすれないで。
一つでもなくすことなどないように。
一滴だって零すことなどないように。


今日の雫をのみこんであたしは明日へ染まっていく。
夢のなかでは昨日のつづきが喉を伝い落ちていく。

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