Jazz and Blues/恋月 ぴの
 
に溺れてしまったら何も見えなくなる

わたしのこころを見透かしたように
時計の進み具合なんか気にしてみせたりして

それでも、わたし溺れてみたい

節くれた親指の確かさだけでは満たされ得ずに
涙が出るほどに息の詰まりそうな
自制心などかなぐり捨てたくなるような

唾液に濡れた親指を舌先でなぞり
付け根を彩る口紅は縁飾りのようで

ブラッド・スエットアンドティアーズ
血と汗と涙
自立した作品になるってことは
そんなものとは切り離されて
デートの添え物になることさえ拒まずに

トイレにでも行ってくるね

西日のあたる窓際の席を立つとき
あのひとの視線をお尻あたりに感じ取り
勝負なんとか穿いてきたっけ
だなんて
スカートの腰のあたりを軽く押さえて


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