風雷/楢山孝介
 
かもしれない

「もう一回落ちんかなあ」
腰をさすりながら起きだしてきた母が
荒れた庭と、晴れ始めた空を
愛おしく見つめながら言う
「天気良くなってきたし、もう来んよ」
「ますますお父さんみたいやわ」
ああ、これはのろけなんだ
とようやく気付く

母は冷蔵庫からビールを出してきて
風雷の落ちた辺りに撒き始めた
「お酒好きやったからねえ」
黒焦げの雨蛙が
ビールの泡で洗われていく
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