響け/松本 卓也
 
誰かに聞こえるように呟いていみても
何の解決にもなりゃしないことは
とうに分ってるつもりだけれど

馬鹿にされても笑うフリ
傷つけられても泣くフリ
辱められても怒るフリ
形作られた実像が侵食する
ちっぽけな自分らしさだけを頼りに

太陽が眩しい事
雲が真白い事
風が心地よい事
ご飯が美味しい事
納得しながら生きている

もう三十だぜって自嘲する
誰かを支える事すら放棄した
味気ない人生に見切りをつけて
ひたすらに現在を積み重ねる

果たして価値に目を背け
笑う事が出来ると思われている皮肉を
どれだけ認めることが出来るだろう

囁く空想が写した自分ら
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