イェス=キリスト、山手線に乗る/草野春心
けさ乗車率120パーセントの山手線に乗ってたら
五反田か目黒の辺りだったかな
必死の形相でイェス=キリストが
閉じかけの扉に体をねじ込んで
ぼくの隣の吊革につかまったっけ
あんまり疲れた顔してたから初めは
彼がイェス=キリストだなんて思わなかった
茶色い髪はワックスで整えられていたし
スーツもネクタイも革靴も高価そうだった
でも他の乗客はみんな自分の事にかまけていて
彼には目もくれなかった
ぼくにしたってただその疲れっぷりに見入っただけで
イェス=キリスト的何かがぼくを惹きつけたんじゃない
――と
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