街/アンテ
できなかった
学校の友達が
一人もお見舞いにこなかったこと
聞けなかった
時期が来れば自分から
話してくれる
退院の日
警察がやってきて
成美から事情を聞いた
後ろから突き飛ばしたという
クラスメートの話を
最後まで否定しつづけた
なぜだろう
成美の思い出は
どうして
一言もしゃべらない場面
ばかりなのだろう
父の住むマンションは
いちおう存在していた
エレベータのボタンが
その階だけ消えてなくなっていて
階段を登っていくと
通路が壁で遮られていた
まだ小さな成美が
何度も何度も登ったり降りたりした
階段が
ずっと続いている
そう 確か
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