不安旋律に嘆く/森さかな
迷宮入りの
記憶に住む風景は
微笑む理由を
教えてはくれない
赤い炎すら
つめたさを流すから
ほろりと笑った
きみが寂しい
塀に沿って歩く
怖いのは顔のない人々
道端で探す
光はくすんでいるのだ
つよい、感情すら
醒めてしまうから
頬を伝った
涙の寒さも知らない
いくら刻みつけても
消えてしまうから
写真のなかの
微笑んだぼくたちは
死んでしまって
きっと蘇らないことを
追いかけてくる
時間から
逃げきれないのだと
わかってよ
指から去る砂を
泣かないでよ
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