獏/有邑空玖
暗い夜の底に閉じこめられているみたい
そう云えば夢を見ていた
金色の光なんて何処にもなかった
君の名前は悪夢と云うの
爪先から秋になろうとしていた
金木犀が散る紫の夕暮れ
手を伸ばせば触れられそうな距離に君がいて
それでも届かないこの隔たりを何と呼べば良い?
鉄塔の向こうに飛行機雲
蝙蝠が放物線を描く
鬼さんこちら 手の鳴るほうへ
燃えるような彼岸花
凡ては幻だった
酷く不愉快だ
「そうしなければならないのなら」
手を振って告げるべきだった
夏から遠く離れて
茅蜩(ひぐらし) 喧噪 空の果て
過ぎ去る毎日に
掻き消される思
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