冬神楽/木立 悟
 



雨に不安と不機嫌を飾り
原のなかを歩いている
遠く 近く
水の姫は咲いてゆく


坂へ至る午後があり
ふいに流れ落ちてゆく
遊びも笑みも
到かぬほどに落ちてゆく


水のはざまの直ぐの道
失うものはわずかに巨きく
裂けた布のかたちを描き
常に果実のにおいをしている


器の地層のはざまから
川へ川へと音は流れる
突き刺さるまま 砕かれるまま
海へ海へと音は流れる


曇は剥がれ
地に叩きつけられ雪になる
二羽の鳥が狩り場を争い
午後の傷を巡りつづける


共に歩いていた青空が消え
さらに青い冠となり
髪を梳いては上昇し
地の花々を見つめている


影を灯して羽はすぎる
水を抄えぬ手のひらのそばで
唱は次々と水になり
姫の衣をたなびかせてゆく












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