自作小説冒頭、つまり失敗作のかけら/佐々宝砂
し無数の、真珠色をした卵だった。卵だと判ったのは、薄い殻を透かして、黒い三本角の生き物が蠢いているのが見てとれたからだ。
「単なる夢」
柚子は云い、うっすらと微笑んだ。そしてぼくは見た、柚子の目から、くちびるから、耳から、鼻孔から、しまいには白い頬の肉を裂いて、あとからあとから真珠色の卵が生まれてはこぼれおちるのを。ぼくにはもう、悲鳴をあげる気力さえ残っていなかった。
やがてぼくと柚子は、ベッドルームの中で真珠色の卵に埋もれてしまった。
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