回帰線/ホロウ・シカエルボク
こう
死んだらどこへ行こう
思い出の景色の中へ行こう
思い出の景色の中に行って
思い出の路地や
思い出の曲がり角にある
思い出の本屋を探そう
そこにはたくさんの背表紙が並んでいて、そのどれもに俺の名前が書いてある
その背表紙を飽きるまで眺めていよう
どうしても読みたいものがあれば持って出ればいい、誰も咎める事は無い
そこには誰も居ない、そこには死んでしまった俺の意識しかない
その場所に俺以外の誰かが来ることなんてない
思い出の本屋は
思い出と同じ香りがするだろうか
積み上げられた無数の
積み上げられた無数の本の香り
俺は助走をつけて積み上げられた本の中へ真っ直ぐにトペ・スイシーダ、そうすると眼前には必要な景色が広がるんだ、必要な景色、必要な景色――いつかずっと昔に、その景色を見たような気がする、何度か、何度も――俺は首をひねる、だけど断片すら思い出せはしない
空に向かって突き上げられる厳しい風を見たんだ
失うものの数を呆然と数えていたある昼下がりに
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