回帰線/ホロウ・シカエルボク
歩む側から忘却に放り込まれるような日
空に向かって突き上がる厳しい風を見たような気がして
傷つくはずの雲を探した、長いこと、眼を凝らして
昨日、少しだけ降った雨の後
呑気な冬が重い腰を上げ
縦横無尽な氷が四肢にまとわりつく、瞳が何かあらゆる直視を避けようと画策する日
海の音がした、確かに波の音が
寂れた繁華街に近い公園の側で
驚いて振り返ると
鮮やかな落ち葉が
こぞってどこかに流れていくところだった
波打ち際で遊ぶ子供のように、腹ペコの鳩どもがその中で地面を突いていた
どこかの養護学校の生徒が作ったパンを売りに来る移動販売車の脇を
三本足の痩せた犬
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