箱根慕情/麻生ゆり
あなたと箱根に行ったのは
もう何年前になったでしかょうか?
あのときはシーズンオフだったから
観光客も少なくて
とても楽しい旅でした
おいしいお蕎麦を食べて
バスのなくなった山道を
ひたすら3時間歩いたね
でも温泉の効果か
次の日は筋肉痛になりませんでした
それから流れ落ちる滝を求めて
誰も歩かないような山の中を探り
ただおしゃべりしながら
やっぱりひたすら歩いたね
本当に楽しかったね
それにあなたが
初めて買ってくれたイヤリング
今でも宝石箱にしまってあります
今でもあの喜びが残っています
あれから何年たったことでしょう…
私の想いはあの頃のままで
心のどこかに固まりがあるんです
そしてそれを取り除けるのは
去って行ったあなただけです
ごめんなさい
私の中の思い出も
あなたにとっては
もう単なる記憶なのでしょうね
ごめんなさい
もう私にわかることなどなく
もう
何もない
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