ジェットスランプ/木屋 亞万
を引っ張ってふーふー
副操縦士が頭の裏で囁いた
いまどきの飛行機は自動操縦だから
あまり深く考え込まずに
僕らに身を任せてくれればいい
機長は重くなった衣服を引きずり
昆布と機内に帰ってきたぜ
そうだ考えるな感じろ
目の前に道がある限り
走り続けろいのち果てるまで
いよいよ離陸
瞬間は呆気なく訪れ
待ち望んでいた重力を
身体で感じた客から歓声
興奮は意外にすぐ冷めて
アンデンテ歩く速度で
アテンダントはアルデンテ
パスタを配ってデルモンテ
フィッシュでフィニッシュ
フィッシュオアパスタ
いつも通りの機内
いつも通りの自動操縦
スランプ気味のジェット機は
ジェット気流に捕まって
着陸なんかできやしない
車輪が出なけりゃどうするの
腹打ちなんて絶対嫌だし
不安症の旅客機は
太平洋を移動中
どうも着陸できそうにない
みんな救命胴衣を引っ張ってふーふー
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