ねこのはなし/恋月 ぴの
 
ねこって可愛い
飼いねこは飼いねこらしく
ノラねこはノラねこらしい顔しているよ
やっぱし育ちなのかな
ひとに媚びるのうまい飼いねこがいて
いじらしいほどノラなねこがいる
そんなねこって
ほんとはさびしくて
あのひとに強く抱きしめて欲しいくせして
誰もいない原っぱの土管のなかで
ひとり身づくろいしてる

おなか減ってなんかいないよ

底冷えのする土管のなかで
飼いねこだったころを思い出してみる
ごはん食べられるのはあたり前で
おやつだって食べられた
あの頃
あのひとの差し出す指先に甘え
気が向けば
お酒くさい胸元へ忍び込んでみたりした

幸せって失っては
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