『肌色』/東雲 李葉
 
あなたの肌に指を這わせた。
僅かに色の違ったそれらは交わること無く重なった。
私の肌に指を這わせた。
同じ色であるはずなのに私は私と交わらなかった。
薄皮一枚に包まれた今にも零れそうな中身。
存在とはあやういようで案外硬いものだと思う。

あなたは少し肌が白い。
産まれの所為だと笑う目元の皺もやはり白い。
私の腕の裏も白い。
太陽の光を逃れたそれは絹のようにきらきら光る。

パレットに広げた肌、空、水。
あなたの肌も、大空も、頬に伝う熱い水も、
全部全部それとは違う。私はこんな色を知らない。
空を水の色で塗る。しかし音は聞こえない。
水を空の色で塗る。しかし小鳥は囀らない。
あなたの腕に色を塗る。不健康な肌には鮮やかすぎる。
私の肌には貴方が塗る。ファンデーションみたいと私は笑った。

くすぐったい絵筆によって私の腕は肌色に染まる。
子供の頃は何も知らずに私はこんな色だと思ってた。
だけれど白い腕に浮く明るすぎる肌の色が、
なんだか不気味に思えてきて私はあなたと肌を合わせた。
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