光/運動/サトリイハ
いっぱいになってしまう。白い石をひとつずつこぼしながらずっと歩く。ポケットが空になったらまた白い石を拾いポケットに入れる。繰り返す。夜空の幕を引き上げる人がいなくなってしまってここのところ、石より光るものを見ていない。歩く。拾う。こぼす。歩く。拾う。波は時おり、ひっそりとささやき、奥ゆかしく指をのばしてあたしのくるぶしを触り、去ってゆく。歩く。拾う。こぼす。思い出す。思い出す。オボエテル。こぼす。拾う。思い出す。オマジナイ。拾う。こぼす。歩く。サヨウナラ。歩く
3.
靴紐を固く結んだのだから晴れる高い空は四角いのうーんとのびるとあの屋上まで、すぐだから早く早く走らなくちゃ間に合わなくなっちゃうから走る走る手をつないであげてもいいけど、ぜんぶ飛ばしてくんなきゃ、重たい荷物全部飛ばしてくんなきゃ疾走で、雲があと3センチ動くまで疾走で、街を追い越してアスファルト蹴ってぐんぐん走って追いつきたいのどうしても追いつきたいの、今じゃなきゃ間に合わないの今あたしがあたしであるこの時でなくちゃ駄目なんだから屋上から跳んで掴まえたいのあのおっきくてまぶしいやつ!
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