白秋/
佐野権太
森のなかを流れる
チェロのように
日々が穏やかであればいい
雲母の放つ
光りのように
心地よく剥がれる断面を重ねて
生きていきたい
うまく思い出して
うまく笑う
どんなときだって
それはきっと
心の持ちようなのだと
わかっているくせに
一日も季節も
何もかも
あっという間で
誰に褒められるわけでもなく
理不尽に叱られて
しがみつく場所もないまま
ただ、過ぎてゆく
無実の空に
飛来する白い冬は
長い尾を
広く伸ばして
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