「平 衡」/菊尾
バランスを無くしたのは
片側が傾いたから。
飛行船は空の果てを航空中。
上手に舵をとって
進んでいきます。
見下ろした景色が綺麗だと君が言う。
見上げた景色は遠すぎて実感が湧かないんだと僕は言う。
気付かないまま
見えないまま
空の青さだけが二人に見える全てです。
鍵はポストに入れておきます。
知っているのはあなただけ。
いつか誰かが手にしても
使い道を知らないのなら意味もなく。
鍵だけでもドアだけでも
意味はないのです。
晴れが降る。
僕は撃たれて
真正面には君の顔。
今が葬られて
鉄壁な悲しさにも穴が開く。
いつも何かが降っている。
穴を通して僕を抜けていく。
芽吹いたら咲かすだけ。
咲かしたら散っていくだけ。
もう終わりだと君が言った。
僕はそれを信じない。
循環していくのは
君も僕も一緒だよ。
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