「 コワレ。 」/PULL.
 
こちらから導く夜もあり、そんな夜はことのほか、男は悦んだ。またしばしば男とは、事変わる夜もあったが、それでも男は嬉しいようであり、よく応え、交わりを続けた。そうしてながいときが過ぎ、さらにながいときが過ぎた。わたしは、相変わらず納まることはなかったが、とりたてて不満な様子を見せることもなく、毎晩踊り、まわり、交わり、続けた。男は、いつしか夫と呼ばれるようになり、おとうさんになり、おじいちゃんになり、ある朝、死んだ。

 葬式を、出した。
 式は盛大なもので、参列するものたちの列は向こうの端まで続き、その涙は川となり、海まで流れた。泣き虫のおとうさんらしいいいお葬式だったと、娘たちは口々に言い
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