「 コワレ。 」/PULL.
 
答えると、ほんとうですね、とまたか細く聞かれ、ほんとうにほんとうです、とまた答えた。ほんとうなんだ、ほんとうなんです、ありがとうございます、いえどういたしまして、と会話は続き、気がつけば人だまりもまばらになり、皆口々に、何だつまらねえけんかにもなりゃしねぇ、袖振り合うも多生の縁いやぁいい和解だった、後はお熱い若いふたりにまかせて邪魔者は帰るとしますか、それではおたっしゃで、さらば、また合う日まで、アデュー、と言い言い、通行人に戻っていった。

 急に、あたりは静かになり、わきゃわきゃというわたしの喋り声だけが、やけに大きく、聞こえた。なのに相変わらずか細い声で、男は、この近くに、ぼくの家がある
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