さようなら/斉木のりと
さようなら
この世を去るには完結過ぎる言葉か
あいさつでもあるこの言葉を永遠の別れのときにも使えてしまう
使い古された、使い古されてもなお新鮮な
この言葉は、私の旅立ちの言葉で宣誓となる
生まれてから後悔のなかった日はない
だからといって不幸であったわけではない
親を憎んでみたり、社会を呪ってみたり
それが力となり生きる希望ともなった
より知識を深め森羅万象に好奇心
知れば知るほど世界は汚くかつ美しい
美しさ、そう私は美しくありたかった
そして思いきり汚れたかった
生きている実感、苦しみ悲しみを耐える喜び
小さな幸せをかみしめる果敢なさ
すべては同じ事
今日まで悟れず生きてきた
旅立ちとなる日には
太陽の光の暖かな、空気の澄んだ日を選んだ
私の声は届くだろうか
この潰れ擦れた声は、同情を求めない
まだ言葉が続くようになめらかに
さようなら
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