りんごの詩/恋月 ぴの
 
りんごを食べたら
なつかしい故郷の味がした

と言ってはみたものの
この街で生まれ
この街で育ったから
故郷らしい故郷なんてどこにも無いんだけど

でも、不思議なんだよね
ひとくちかじると
りんごの木がふんわりと浮んできて
枝が折れそうなくらい実ったりんごたち
そして
そのりんごたちを慈しむかのように
ひとつひとつ大切に収穫する
てのひらの温もりを感じてしまう

「他の果物でもいっしょだろ」
だなんて余計なつっこみされてしまいそうだけど
わたしにとって
それはみかんでも無いし
ぶとうでも無くて

今年の雪の訪れ
例年に無く早いみたいで
収穫前のりん
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