神話壱/はらだよしひろ
 
昔が辿る
私への流れ

風は撫でて
鳴き声が猫になる

陽射しから誘われた
笑いのように言葉は拒まれ
今が混沌から放たれる

海辺は溶岩の岩ばかり
みかん畑へと続く坂

おいしそうに泣きながら顔をすぼめて

「ありがとね」と言った 母

神様は青い血となったから
私も今を生きている

ハン ハン ハン

恨(ハン)なのか限(ハン)なのか判らない

遠ざけられた過去は
ウサギ山の蛇

道は知っていた
柵を囲って生きている心が
研ぎ澄まされた
檻となっている事を

誰も知らない
海を越えた女神が
人生の設計図を支配したなんて

脳が頭皮を刺し
肌が血を裂く

シグナルは
無感情という感情に感動して
全ての感情を殺す

夕陽は時を刻みながら
何を生み出そうとしているのか

生きてきたんだ
生きてきたんだよ
生かしてくれなんて
頼んだ覚えはないよ

眼差しに聞け
心に聞け
閉ざされたものに聞け

神話はまだ生きている
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