Rainy / Titan/たりぽん(大理 奔)
 
午前四時の透明な気圏に
黒雲が闇を重ねようとしている
抗うように惑星が輝いたのは
いつも忘れてしまった季節
霧雨が街を満たそうとする

   爪を立てる前のつややかな果実だ
   結界の向こうにその潤んだ正体を
   想い焦がれるたびに甘酸っぱく
   木星のそばにビー玉のようにばらまく

道程(みちのり)ではない生き方
だから孤独に
輝き燃え尽きることもない闇に
凍えたとしても
   
あなたのためにいきて
私だけがたどり、届く果てで
黒髪の奥の左耳に伝えたい
忘れた季節の音
タイタンでは朝、雨が降るのです

   今日も爪を立てる
   傷つけるためではなく
   その果てでまじわるための

それは二人だけの儀式
背中に流星の痕残して
深いふかい旅に出る
軌道とは
届かなくても戻ることはない
だれも辿らない旅路の名前
ほんのわずかだけ寄り添って
あとは凍えていくだけの
熱量



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