空とひとり/木立 悟
 



水は軽くなり
あたたかくなる
その道を通り
音は離れる


緑が
水を洗っている
映る景は減り
やがて失くなる


短い香を捜す指
見つけられたものは燃されゆく
ぽつりまたぽつり
燃されゆく


言葉が言葉に鳴りつづけ
かたちはにじみ 消えてゆく
煙だけがやわらかく在る
降る雨のなか 雨より透る


無明の声に囲まれている
食べものをあげるからと
集まってきた生きものに
何も与えず疎まれている


哀しい腕は繰りかえす
屋根に生えた木蓮から
ひとかたまりの羽を摘みとり
空へ撒くたび 空は増える


ひとりのむこうの
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