逃げ雨/唐草フウ
あめよ逃げないで
白々しく霧、すとおむ。影ない静かすぎてこわい
炎よりもゆらぐゆらゆららいあい今あいされない
この胚は縮こまっている
この肺は誰にすくわれる
ツェロの弾く音だけが
剣を惹きざく音だけが
何かがはじまる夢を見た
それはとてもこわかった
変われないと信じているのかだなんて
それだけじゃないことを知っていて訊くの
あめさえも逃げてゆく
ばいばいを、ピアニッシモの音で
きれのある動きで
サッササッサといえないまま去っていくなら
きずごと持ってこのくちびるごと縫っていけ
ああ あめがふれば
あたたかさに甘えずにすむのに
ああ 冷たい雨が降れば
ちぎれるからだがわかるのに
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