りゅんこいすごっこ/沙虹
 
塔楼の守りを仰せつかって
此の世界を眺めて二十余年
まだ此の世の面白さも
遍く総てが美しい
とは認められないまま

君は知っている
昨晩降り注いだPH6の雨の沁みこんだ土塊の味
栗鼠が食べ損ねた小楢の味
カルキ臭い水を張ったビニールプールに泳ぐ
緑の盲いた象の如雨露の味
乱雑な書斎で所在無く鎮座していた西瓜の
ビーチボールの味
久しく弾いていないウクレレの4フレット目の味を
最近じゃ、君の舌に蹂躙されないものは無いような気さえしているよ
いやマジで
僕が自慢できるのは小学校の図工の時間に
こっそり味わった山吹色と黄緑色の絵の具の味を
知っ
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