初旬、二七日/鴫澤初音
って何 愛ってセックス?」
雨が降っていて 学校帰り
家の鍵を忘れて 入れなかったまま 軒下で待っていた
ずっと待っていた
雨はさあああと降っていて 霧みたいに視界を白くさせた
教室でいつも一人だった 誰かに話しかけてもらいたいと
思ったこともなければ 誰かと話したいと思ったこともなかった
ただ早く終ればいいなぁってそれだけ考えていた毎日
毎日 だけど泣きたかった 眼を長く瞑っていれば
涙なんていつだって悲しみとともに湧き出てきた 何が
悲しいのかなんて わからないうちに
緑に縁取られた塀の向こうに何があったかな
雨に煙って見えなかった 猫を埋めた丘はずっと先だった
教室が騒がしかった 頬杖をついた机の上をぼんやりと
思い出す
心が どこにあるのか 知りたかった、 妹の、言葉
今更 思い出す
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