手紙/シャッターコーン
 
誰もいない 静かな森の中で 
私は手紙を書き始めた
一行書くのに 三ヶ月ほどかかった
四行書き終えて 一年が過ぎた
足の先が 少し土に埋れていた

何とか四十行 書き上がった
木の椅子から生えた新しい芽が
いつの間にか 私の足に絡み付いていた
だが 気にしている場合ではない
私は手紙を 書かねばならないのだ

これで丁度百行目
息をすることも 億劫になってきた
だけどここで 止めるわけにはいかない
宛先人も 誰だか忘れてしまったけれど
それはもう どうでも良かった

やがて 
私の耳から蔓が伸び
両眼からは 何度目かの花が咲いた
幸い指先は動くので
私は
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