「焼視」/菊尾
 
は黒く焦げた指輪だけ
存在の一切を無くして
元居た場所へ帰るだけ

燃えていく体
黒ずんでいく地面
暗闇の中で円舞する
酷く狭い空間
最期の最後は閉じ込められていく
何重にも仕舞われている箱のように
どこかへ収納されていく
削除されていく記憶の視界
叫んでいる
声にならないノイズで記号のような
呼び方も分からない音を発した
人である事を辞める前に叫んだのは
君の名前だったような

もう少し
あと僅かで舞い上がる
火の粉と一緒に夜風に攫われて
何もかもから
さようなら

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