「焼視」/菊尾
 
膝をついたら倒れてしまうだろう
舌は乾いて馴染んだ声も出せそうにない
夜空
こんな姿でも慰められている
まだ焦がれている

錯覚が招いた幻想も
音を鳴らして整理されていく
既に視界は奪われてしまったはず
映っているのはいつかの景色
熱の行方は無限の広がりを見せていくよう
だらしなく腕は動くことを捨てようとしている
指は伸ばせても握ることもできない
星を掴む動作も過去のもの

この場で消え果てる
続いていくように感じていた風景が
スローに流れては散っていく
脳に諦めの表情が窺える
心臓も残り少ない余暇を終えるだろう
転がるのは黒
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