創書日和「指」 五本/山中 烏流
 


?.親指

雑踏が導く理の
その、陰に息衝くものを
私の指先は
いつだって捉えながら
突き放している

高々と掲げた先端は
赦しを表すのか
もしくは、祈りの一つであるのか
私にはこの爪程も
理解することが、出来ない
けれど


もしかすると
その矛盾こそが
意義なのだろうか、とも
考えている



?.人差し指

爪弾いたものの
振動に、甘えるように
私の水底では
絶えず波紋が起こり
そして、
潰えていく

他へと響くことに
耳を塞いで
聞こえないふりを、する
指されたであろう
左頬の赤さは
きっと、悪なのだと

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