夏空/
たもつ
建物と建物の隙間に
嘘が落ちていたので
女は拾い上げると
口にはめた
口は嘘になった
嘘の口から出る言葉は
どれも本当だったが
美しすぎて
人には見分けがつかなかった
女は身体の中に
小さな夏を飼っていた
かつて乗ったことのある
エレベーターと同じ色の雲が
からっぽの方へ流れていく
他に思いつくことはもう何もない
図書館の青い屋根に向かって
女は身投げをした
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