目が悪い子供たち/斉木のりと
目が悪い子供が生まれました。
その子供は目が見えないわけではありません。
成長するにつれ目がわるくなるようです。
あまりにもまわりが見えないものだから、
ついには詩など書くようになりました。
音に影響されことばに惑わされ、
詩のことばはまるで自分の吐いたことばではないみたいです。
目がわるい子供はそれを気づきません。
でも、世界は目がわるい子供たちがいっぱいいるので、誰も気づきません。
少しいる目のいい子供たちは詩など書きません。
目がいいので詩よりも絵を描くのです。
空が青いのを人に伝えるとき、言葉より青い絵具をばらまいたほうがわかりやすいから。
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